株式会社サイゼリヤ
(イタリア料理店「サイゼリヤ」をチェーン展開するフードサービス業)
<ご回答者:株式会社サイゼリヤ代表取締役社長 堀埜一成様>
Q:導入にあたって企業や人材、社内の雰囲気などはどのように変化したとお考えですか?
A:目につくところでは、社員の中に共通用語が生まれました。これまで「頑張れ!」としか言わなかった、精神論の権化のような古参の顧問まで 「機能」という言葉を使い始めたのです。これは凄まじい変化ですよ。
またFAの実践を通して、論議も成り立つようになってきましたし、何よりスピーディーなものに変わりました。今までは「何が問題なのか」を意識せずに議論していたものが、「どう改善策をあげるのか」について、社員がそれぞれにイメージできるようになってきたのだと思います。
一例ではFAにおいて、機能を考えていない「モノモノ変換」という言葉があるのですが、これが通じる。「それはモノモノ(変換)だろ」と伝えれば、反応してすぐに考え直すというような場面がよく見られるようになりました。思考が深くなったというか、問題の本質を捉えられえるようになったというべきでしょうか。
近頃では本当に会議が短く終わるようになっています。議論の先が読めすぎて困ってしまうくらいですよ。
Q:FAの発祥は製造業ということもあり、サービス業が主である飲食の業界とは大きく異なるのですが、その点で導入にあたり不安を感じることはありましたか?
A:不安はありませんでしたね。確かに、もともとのVE(バリュー・エンジニアリング)の考えはコスト寄りのため、ズレは生じるかもしれません。しかしFAの考え方は機能を追求していくため、飲食・サービス業の改善にも大きく役立ちます。現在弊社ではFAだけでなく、心理学を応用した感覚の定量化や数値化を行うための研究部門を設けています。FAで追求された機能を、数値化された感情・心理と合致していくことで、今まで見えなかったモノ・成果が生まれてくるのではと感じています。
Q:FAの実践・活用で得られた成果や実績としてはどのようなものがあるのでしょうか。
A:具体的には、キッチン面積の半減に成功しました。キッチンはコストがかかる部分であったのに、削減に着手できなかったのです。しかしFAを使うことで、コストゾーンがプロフィットゾーンヘと変わりました。こうした長年手をつけられないでいたものに対して、冷静に「何をしようとしているのか」といった、本質に立ち返られるのがFAの手法の魅力です。機能から考えると、実にいるいろなものが見えてくる。現在ではキッチンだけでなく、フロア、ユニット、天井の仕様まで、次々と改善点が見えてきています。しかも、こうした改善に至るまでの意思決定が非常にスムーズですね。
広島県福山市
(広島県東南部の中核都市 行政)
<ご回答者:広島県福山市長 羽田皓様>
Q:3年間にわたってFAを導入してこられましたが、その期間でどのような変化を感じられましたか?
A:市の公務というのは、市民一人ひとりの幸福と安全のためのまちづくりを行うことが原点です。以前は効率的な行政を推進するため、抑えたコストを新たな行政事業に回すことに集中し、「市民のため」という視点が揺らぐこともありました。
今回の導入は、これまでの我々の仕事の原点を見つめ直し、問い直すきっかけとなりました。実際に職員に対するアンケートでは、7割がFAの手法・考え方は仕事に役立つと回答しています。「FAを使えば、行政も組織も、仕事も変わる」という意識が芽生え始めたことは確かです。もちろん職員同士の議論の中でも学んだ手法を活用する動きが出てきています。
Q:導入から3年が経った今、感じられる課題などはありますか?
A:行政では問題解決において「誰のために行うのか」という本質を見据える必要がありますから、FAの「誰のために、何のために」というキャッチフレーズは非常に親和性がありました。
また、私は行政にとって、最大のサービスは「持続可能なまちづくり」にあると考えています。財政を健全化し、環境を整え、節度あるサービスを展開していく。私たちは市民のための舞台を作るのが本来の仕事です。その本質、本来の仕事をもう一度考えるため、FAのメソッドは有用であると感じました。
現在の課題は、FAの考え方と公務との融合が完全に果たされていないことです。マニュアルや知識は身につけましたが、今後はそれを自らの考えや、個々のケースの中で十分に応用させてくことが必要です。そのための指導や、仕事の中での活かし方を考えるのは、私たち福山市の仕事だと感じています。