A社の場合
・状態:債務過多で返済不能となり倒産。資産よりも負債の方がはるかに多かったため破産、免責。
・実施:破産して5億円の借入金等債務、2億円の資産の状態で、資産を売却せず。債権者、破産管財人の承諾を得て再生。実質3億円の債務をカットし、時価2億円の収益物件を守り収入も確保しました。
・結果:破産手続の代理人弁護士からは、そんなこと100%できるわけがないと言われていたことでしたが、実際にやってみてうまくいきました。
関西の案件のため、現地におもむいて3日間しか時間がとれず、弁済計画の立案と説明のしかたのレクチャーで2日間、じっさいの債権者・銀行との交渉を1日で手じまいました。
東京に戻るため新幹線に乗る直前に破産管財人に承諾を得たとの報告が入り安心した記憶があります。
具体的には清算価値をベースにして、それ以上の金額を返済する弁済計画にしたわけですが、債権者・銀行にしても想定以上に回収できるので計画を了承したのだと思います。
破産では負債のほうが資産より多いわけですから、担保不動産は必ず売却されて返済に充当されるのですが、常識をくつがえすことも条件が整えばできるのです。
この案件の交渉では私は徹底的に裏方に徹し、債務者一族が銀行との交渉を行いました。この成功経験は、債務者のその後の人生で貴重なものになると思います。
B社の場合
・状態:破綻状態のまま事業を継続。最終的に帳簿上6億7千万円の資産、14億円を超える負債で破産。
・実行:倒産・破産したものの事業を収益力のある1部門に集中し再生。
・結果:法人・経営者でいくつもの不動産を所有し、複数の資本関係のない企業を経営しているケースでしたが、メイン銀行はそのすべてを把握していました。
中心になる会社の決算書上の資産価値は6億7千万円でしたが、実際は1億円程度であり、あきらかに債務超過、利益も作為的に作られたものでした。
破綻または倒産してすぐ破産手続にはいる人も多いのですが、事業継続の強い意志もあり、費用も最小限にするため不動産を売却していき破産まで時間をかけました。
複数の資本関係のない企業を経営していたので収益力のある1部門に集中させ再生するには好都合でしたが、海外からの仕入をしていたので、L/C、B/R、本邦ローンといった外為与信(融資)がしてもらえず、D/A(Documents Against Acceptance、輸入手形に署名することで船積み書類を受取り、期日に決済する輸入方式。銀行与信ではないため融資銀行でないところでも取引ができる)で対応しました。
現在では売上数千万円、無借金、黒字の別会社として完全に再生し、経営者は都心の一等地に億ションを無借金で購入しています。
C社の場合
・状態:大口の売掛金の差押えをされ、手形不渡り、倒産して売上が0円に・・。
・実行:利益率の高い事業にこだわり、付加価値にこだわる事業展開を続け、数々の問題を解決。
・結果:現在再生途中の案件であり最終フェーズの直前の状態のため細部をお話しできない部分もあります。
売掛金の差押え、手形の不渡りで破綻。経営者が倒産回避の資金繰りにがんばりすぎるあまり、手持ち資金数万円からのスタートになりました。
一目見て 決算書は銀行借入を意識して利益を盛って作られたものと感じましたし、借入の金額は億単位と大きく資産の何倍もありましたので、決算書を見せて銀行員百人に聞いても、あるいは、税理士百人に聞いても全員が破産しか選ばないと思いました。
そんな状況でも事業として再生できると考えたのは、当座比率の高さ、流動比率の高さ、在庫の質量と把握のレベル、借入がない状態でのバランスの良さが第一にあげられます。
ただし、経理事務はほとんどが税理士への丸投げであり計数管理は脆弱でした。
財務面以外では、経営者の人柄の良さ、素直さ、考え方。そして強いモチベーションがあり私の心を動かしました。
短期間で体制を整え、なんとか50万円を用意して従業員の再雇用、取引先への謝罪と説明を行い事業を再開。金融機関への弁済額の提示などあっというまに時間が過ぎました。軌道に乗るまでに2年余、その後に1000万円を超える急な資金が必要になることもありましたが、利益剰余金があり、対応する資産もあったのでうまくいきました。 銀行には清算価値以上の返済をしているため、つまり、銀行側がすでに償却している部分の返済をしているため、破綻債務者であるにもかかわらず好意的に接していただいています。
事業内容も大きく変わり、2021年度は2億円を超える売上。期中キャッシュアウトのない決算賞与、固定資産圧縮損など節税の限りをつくしても700万円を超える当期純利益でした。また2022年は減収したものの、利益の圧縮をしても前年に近い水準の利益を計上しています。